こんにちは、現在ドイツでソムリエをしているWBSエクセレンス講座の講師なーなです。
2023年でのソムリエ協会の認定する試験での資格の保有者は、
ソムリエ 39,719人
ワインエキスパート 22,529人
合計 54,248人
日本の人口の約2000人に1人はソムリエ協会の認定するワインの資格を有していることになります。今後もソムリエ協会の主力商品である認定試験は継続し、有資格者の人数は増えていきます。
その中で海外で働くワイン関係の日本人の人口には明らかな数値のデータは出ていませんが、現在(2024年)の時点では多くはないと予想されます。
実際に私は日本から海外に出て1年半が経ちましたが、経飲食の業界で出会う日本人の料理人は多くても、それ以外のサービスの分野で海外で働く日本人には滅多に出会えていないのが現状です。
ワイン関係で知り合った日本人で海外で活躍している方では、インポーターの方、ワインショップを経営している方、醸造の仕事の方などでした。海外で働く日本人ソムリエにはまだ出会えていません。
少なくともこのブログを読んでくださっている方は、海外で働いてみたいという希望をお持ちですが、同時に言語、スキル、経験、環境、など、数え切れない不安も抱えているのも現状でしょう。
実際にこれらの問題は、ひとつひとつ生活をしながらでもクリアできるものばかりです。
今回は、その中でも一番大切なこと「決断する」についてお伝えします。
ソムリエの海外移住で最も大切な「決断力」
未来を変えるための原動力が「決断力」
煎じ詰めれば精神論ですが、「決断」をすると「行動」が変わります。
そもそもなぜ「決断力」が一番大切なのでしょうか。
「決断力」=複数の選択肢から責任を持って決定し、実行する力のことを指します。
最終的には行動の積み重ねが現状を変化させることに繋がるりますが、行動の原動力が決断力です。
現状の環境や生活に何の不満もなく満足していれば、決断する必要はありません。
しかし、ある程度仕事も覚えスキルもアップし今後の展開を考えたときは誰しもが「このままでいいのか」と仕事に疑問を感じる瞬間があります。
今よりも「違う生活や環境で暮らしたい」「自分の実力を試してみたい」「経験値をもっと増やしたい」などの思いがよぎったのであれば、それは原動力となり決断する力の糧となります。
決断力が役に立つ場面は
-
今後のキャリアを選択するとき
-
マルチタスクをこなすとき
でしょう。では、決断力と経験をどう活かしていくのでしょうか。
まずはお手持ちのご自身のスキルを見直し、判断する材料を整理しましょう。
ソムリエ・ワインエキスパート試験に合格した経験があれば決断は難しくない
2023年でのソムリエ協会の認定試験での合格率はソムリエ17,7%、ワインエキスパートでは41,9%
ソムリエとワインエキスパートの合格率に乖離がみられますが、どちらの試験の難易度に大きな差はありません。
ここについては、ソムリエの受験者のほうが「決断力」が低かったから合格率も低いということではありません。
既にソムリエ協会の認定資格をお持ちの方はご存知でしょうが、試験の難易度は高く、努力なしでは合格できません。
そもそもこの試験に挑もうと決めて挑戦した経験こそが「決断力」が発揮された瞬間です。
すでに認定資格をお持ちの方は「決断力がある」といえます。
ここで決断に対してのひとつの経験値を確認できましたね。
ソムリエの資格を活かすために
上記のようにソムリエ協会の認定資格を獲得した後は、ご自身のキャリアや勤務先の店にも箔が付き、顧客からの信頼も増し一つの自信を得て、ソムリエとして新しい人生のスタートが始まります。
仕事の充実感も増し、今後のキャリアやステップアップについても考えることも出てきます。
中にはソムリエコンクール、ソムリエ・エクセレンス、WSET、ASI Diplomaなどのさらに難関のステージへ挑む方もいらっしゃるでしょう。
資格の獲得が目的であればこのままどんどん挑んでください。
しかし私がこれからお伝えしたい内容は、勉強をしてソムリエ試験に合格した方にこそご覧いただきたい内容です。
決断して努力して得た知識を活かす手段のひとつとして「海外就職」です。
すでにここまでお読みの方は「決断力」「行動力」があります。さらにもう一歩踏み出すための判断材料を探していないでしょうか?
参考までに実際に私が日本から海外移住を決定するまでの具体的な体験談を記します。
海外就職の体験エピソード
きっかけ
海外に移住する前の私は日本の地方のオーベルジュのレストランに約10年努めていました。
元々海外に出ることは好きでしたので、いつの日か旅という形ではなく、海外に住みたいという憧れは強くありました。
勤務していたお店のお料理も、住んでいた地域もとても気に入ってはいました。
気がつけば30歳も超えてワーキングホリデーの制度も利用できなくなり、自分の行動できる範囲や選択肢が次第に狭まったように感じて、いつの間にか海外で暮らすという夢も諦めていました。
日本の飲食店には未だに多くあることですが、休日は少なく、労働時間も長い環境でしたので、この先の長い間働いていけるのかも疑問に感じていました。
仕事の内容は好きでしたが、将来を考えると窮屈に感じていました。
コロナ禍で数年間身動きが取れなくなったことも、すぐに決断できなかった理由ではありますが、一方で何かに挑戦してみたいという気持ちもずっとくすぶっていました。
小さな決断から始める
コロナ禍が続く中、エクセレンス試験に挑戦してみようかなと興味が湧きました。
一方でソムリエ・エクセレンスの資格といえば合格率10%以下、ワイン会の猛者でも苦戦する試験内容で対策方法も明らかになっていない試験。
まさにブラックボックスに興味を持ってしまったという恐怖感もありました。
自分には合格するのは無理だろうと思っていました。
そこで、私は決断のハードルを下げました。
「受からなくてもいいから、試験に向けてワインのことを再度勉強してみよう」という小さな決断にしました。
ここで決めたのは必ず合格するという目標ではなく、受験勉強をしよう小さなステップに切り替えたのです。
決断をステップアップさせる
そのうち、「3回くらい受験をチャレンジしてみよう」「まずは筆記試験合格までたどり着いてみよう」筆記試験が合格したら「二次試験」最後に「三次試験」と、階段を登るように徐々にステップアップして決断を繰り返しました。
勉強を勧めながら情報収集をするうちに、WBSを通じた前場さんとの出会いも大きなきっかけでした。
今では私達の実体験と、受験者の情報をもとにWBSではエクセレンス試験対策にも力をいれています。
WBSを通じて2021年度のソムリエ・エクセレンス試験に無事合格。
この時点では海外就職という選択肢は、まだ私にはありませんでした。
ソムリエ・エクセレンスになってから
試験を通じて得たものは大きかったです。
よりワインについて探求したいという気持ちが大きくなりましたし、ソムリエの一般呼称に合格したときよりも仕事に対して一種のプライドを持って接するようになりました。
エクセレンス試験に合格したから、ワインについてとても詳しくなったわけではありませんが、ワインを通じての視野がより広まったのは私が得たもので一番大きかったと実感しています。
受験勉強を通じて得たせっかくの学習習慣も無駄にはしたくなかったので、引き続き何か目標を見つけて学習をしたい気持ちも湧いてきました。
この記事を読んでくださっている方も同じような経験があるはずです。
そこで、今度は第二言語の英語でのワインの学習に挑戦してみようと思い立ちました。
日本から見る英語とワインの資格
外国語のワインの資格の代表的なものには、WSET, ASI Diplomaがあります。
特にASI Diplomaについては、日本ソムリエ協会も合格者の排出に力を入れていて、セミナーも行っています。
世界ソムリエコンクールもこのASIが行っているので、1995年での世界優勝の田崎氏以降、の優勝者の排出が現在のソムリエ協会の目標のひとつともいえます。
当時の私もこのどちらかの資格に挑戦してみようと調べてみたのですが、
WSETの受験料はとても高く、授業を受けるにしても都心(東京、名古屋、大阪など)での開催ばかり。オンラインの授業も土日が中心で地方のレストランで勤務していた私のようなソムリエにはとてもハードルが高かったです。
ASI Diplomaも同様に日本で挑戦するには情報も少なく、情報収集のために頻繁に都心に出なくてならなかったことが、物理的にも経済的にもネックでした。
海外で働いてみようという挑戦
資格を獲得するにもハードルが高かった。かといって資格を獲得した後は職場で活かせる環境だったのか?と問われれば当時の私のいた職場は違いました。
そうしたときにソムリエ・エクセレンス試験に挑戦したときのように思い立ったのが、「海外就職」でした。
とはいえ、何のコネもなければ何の実績もない。旅行で行くのとは違いますし、ワーキングホリデーのサポートがあるわけでもない。
まずはインターネットで「ソムリエ」「海外」「就職」と思いつく限りの検索ワードを入れて情報収集をしました。
ソムリエにこだわって仕事を探せば就職先はかなり限られはしましたが、サービスの分野では国も限らなければそれなりに見つけることができました。
ネット上の情報は流動性が激しいので、こまめにチェックしていれば自分にとって沿った内容のものが見つかります。
ソムリエ・エクセレンスの資格は海外就職に必要か?
ソムリエ・エクセレンスの資格が必ずしも必要か?と問われれば、私の実体験では有利になりましたが、必須ではありませんでした。
渡航先によっては資格の証明書が必要な国もありますので、できれば唎酒師やソムリエなどの資格を持っていたほうが有利です。
それよりも大切なのは職場での実績と、サービスの場合は言語能力です。
とはいえ、私自身TOEICを受験したことはなく英語も接客用のフレーズを覚えてそれを繰り返しているだけのレベルでした。
私の場合はソムリエ・エクセレンス合格→海外就職という順序で現在に至りますが、
海外就職に興味を持っている方が同じようなステップを辿らないといけないのか?
という問いに対しては必須ではありません。
それ以外にもWSETやASIなど履歴書に表記できるものがあれば、書類選考の時点で進みやすいので有利になります。
特に世界に出る日本人の場合は日本酒の知識も求められますので、唎酒師やSake Diplomaなどの資格のほうが採用側の目にも止まりやすいです。
思い立った瞬間が一番旬
興味がある、いつかやってみたい。という思いは誰もが抱えていることでしょう。
今の環境が厳しいから、自分にはまだハードルが高いから、、、などの理由をつけて思い立った気持ちに蓋をすることもできます。
私もいきなり大きな決断をしたわけではありませんでした。
まずは、自分が安心して挑めそうなところから小さなことを決断していきました。
この繰り返しが自分の世界を広げることになりますし、思いがけなかった可能性を示してくれることにもなります。
今回は私のエピソードを交えてお伝えしましたが、それぞれの進み方もありますので
海外移住を考えている方の参考になれば幸いです!
長文でしたが最後までご覧いただきありがとうございました。